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この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO(PC98)

 エルフに移籍した剣乃ゆきひろが作り上げた、壮大なテキストAVG。
 それが1996年12月26日にPC98版が発売された「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」でありました。

 シーズウェアで「DESIRE」「EVE」といった名作を産み出した剣乃ゆきひろさんがエルフに移籍し、製作が発表された作品でして。
 蛭田信者でかつ剣乃作品にも魅了された筆者はワクワクしながら発売を待っていました。

 主人公、有馬たくやは2ヶ月前に父を亡くし、半年前に父が再婚した若き義母の亜由美と二人暮しをしていた。
 だが死んだはずの父から小包と手紙が……父は生きていてとある場所にこい、との呼び出しだったのだ。
 そしてたくやの数奇な運命がここから始まるのであった……

 というプロローグからはじまり壮大な物語が展開していくことになります。
 プレイ時間は37時間、音声のないテキストAVGとしては驚異的なボリュームでしたね。

 まず何をおいても語らなければならないのが本作独自のゲームシステム、A.D.M.S(アダムス)であります。
 これは「オート分岐マッピングシステム」の略称で、簡単に説明するとマルチなシナリオであり、それぞれのルートにヒロインがいて主人公の手助けをしたりその逆であったりするのですが、それぞれのルートをツリー構造で視覚的にわかり易く表示されまして。
 宝玉と呼ばれる特別なアイテムを集めるのが目的ですが、その宝玉を使うと分岐場面でセーブすることが可能になります(中断セーブもありますがロードで戻れなくなる仕様)。
 つまりあるアイテムがあればバッドエンドを回避出来る場合その直前で宝玉セーブし、別のルートでそのアイテムを入手した後に宝玉ロードで戻り問題解決、ということが可能になるわけで、それを駆使しつつ謎を解いていくのです。

 このツリーを見ながら分岐を埋め宝玉を集めるというスタイルがもう、やめるきっかけがつかめないほどの面白さで。
 フラグ立てはややきつめながらも攻略し甲斐は特大であり、「疲れるけど面白くてやめられ」ずほぼ徹夜状態でプレイしたのでした。
 分岐探しをプレイヤーの目的とさせるという発想の転換が真に見事であり感嘆させられましたね。

 また今作のA.D.M.Sは密接にシナリオは絡み合っており。
 謎が謎を呼ぶ展開は先が気になって仕方なく、プレイヤーが作り手のワナにまんまと乗せられていることさえ楽しめるぐらいで。
 筆者はヒロインの一人であり、核心の部分に大きく関与している波多乃神奈というキャラのルートをプレイしているときは本当にノめりこんでしまい、彼女の危機を救うべく必要なアイテムを探すシーンでは興奮状態に近い心境になりながら必死に探したものでした。

 しかし物語後半では主人公に大きな試練が降りかかり、物語の雰囲気もガラりと変化したのですが。
 この展開には正直、馴染めませんでした……いや、剣乃さんが本当に描きたかったのがこのパートであることは理解出来ましたが、なら前半でやってきたことは一体何だったのか、と。
「待っている人間がいるのに、コイツは何まったりしてやがるんだっ!」と、かなり醒めた心持ちでその後の展開をながめることに……エンディングの盛り上がりに関しては見直す部分もありましたけどね。
 そう、前半部分と後半部分とでアンバランスであったことも気になりました、後半が消化不良な印象は否めません……剣乃さんも悔やんでいたようですが。
 あとここで描かれるテーマは社会的秩序に挑戦的な部分もあり賛否両論でもありました。

 キャラクターに関しては、ヒロインたるべきキャラの出番がああも遅いことはどうかと思うものの、全体的にはこの物語を彩るにふさわしい面々でありました。
 一部に「エヴァンゲリオン」の某キャラに設定が酷似してる所は気になりましたが、その部分を乗り越えてお気に入りキャラになってしまったり。

 音楽も剣乃作品ならこの人、と言える梅本(島本)竜さんが担当されましたがさすがの一言。
 プロローグの曲が一番印象的ですが「神奈」「剣ノ岬」のメロディーも染み入るものがあります。

 ということで。
 後半の部分への不満がたたり、剣乃作品の中では「DESIRE」ほどの個人的評価には到らず、でありました。
 しかし「オート分岐マッピングシステム」は本当に凄いものと感じました……このシステムを使った別の形での新作を望みたく思ってましたが、やはり剣乃さん以外に使いこなすのは難しいのかフォロワーは現れませんでしたね。
 筆者の評価はランクです、A.D.M.SだけならAランクだったのですけども……残念。

テーマ : 美少女ゲーム - ジャンル : ゲーム

タグ : 剣乃ゆきひろ DESIRE EVE この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO A.D.M.S

コメント

RE:超大作ではありました、が

>カール大公さん

 まあYU-NOの不満は後半に尽きますよね、どう考えたって。
 前半で体力使い切って、というお気持ちはよく判りますもの……とか言いつつ、私はサターン版にも手を出したりしたんですけども。
 ま、ADMSは凄い楽しいゲームシステムでしたしリプレイしてみる気になったんですが、そうは言っても声優に好きな人がいなかったらやらなかっただろうなあ。

 あの分量をアニメで2クールに収めるのは大変そうですな……4クール分くらいの分量はあるような。

超大作ではありました、が

◆飛龍さん

>しかし物語後半では
>主人公に大きな試練が降りかかり、物語の雰囲気もガラりと変化
>この展開には正直、馴染めませんでした

 こ・れ・に・尽・き・る。

 前半(とはプレイ当時思っていなかったけど)宝玉集めで苦労しながらもストーリー分岐探しを堪能し、「よし、いよいよクライマックスだ!!」と思って体に鞭打ちつつスパートをかけたところ『実はいままでは序章にすぎませんでした』的展開に突入して、もう茫然自失、心が折られたような絶望感に襲われましたね。

 正直もう前半戦で体力を使い切っていたので、後半の展開はもうへとへとで苦痛でしか無かったという・・・、


>剣乃さんが本当に描きたかったのがこのパートであることは
>理解出来ましたが、なら前半でやってきたことは一体何だったのか、と。

 ハイ、これです。前半と後半でガラリと雰囲気を変えるとか、仕掛けとしては凄いと思うのですが、無駄に(というと語弊がありますが)ボリュームがあり過ぎました。プレイしていてもう体力と気力の限界を超えてしまい、楽しいとか面白いとか感じられるところを過ぎ去ってただの苦行と化していました。

 剣乃さんはエルフ移籍後初作品という事で、力が入っていたのでしょうが、入れすぎでしたね。目指す方向は凄かったと思うのですが、もう少し抑え気味にしてくれていればなぁ、と未だに思う作品です。

 多分TVアニメで26話くらいで見たら丁度いいのではないかなぁ。
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